迷探偵アナンの日常

気ままに生きているだけなのに、厄介ごとがやって来る

本社からの刺客


それは突然やって来た。

ある朝、私が自分のデスクでその日の業務の準備をしていると、社員とおもわしき50代ぐらいの中年男性が私のほうへやってきて「今から使える部屋はあるか」と聞いてきた。

 

私の仕事の詳細はあまりここでは多く語れないが、「部屋」を用意するのも私の仕事だ。

とはいえ、その部屋というのはデスクワークをする部屋ではない。

基本的には社員が自分で部屋を予約するのだが、緊急の場合は私が対応することもある。

その男性社員は続けざまに「自分で予約をしなければいけませんか」と少し苛立った様子できいてきた。

 

服装はスーツではなくカジュアルなシャツにジーンズ。背中には黒のバックパック

仕事に来ているのか遊びに来ているのか、何をしに来たか分からない装いではあるが、首から下げているのは間違いなくこの会社の社員証である。

 

私は空いている部屋を確認し、利用時間と名前を問うた。

社員の名前が分からないと予約ができないからだ。

私はその中年男性社員の名前を聞き出し予約を進めた。

部署名を聞いて本社の人間だと言うのはなんとなく分かっていたが、それをその時に気にすることもなく、適当な部屋を予約をし案内をした。

 

その日から、たびたびその中年男性は本社ではなく、わざわざ都内にある支店にやってきて、部屋を使い始めた。

通常の部屋の利用方法ではないと気づくのは、それから2か月ぐらい経ってからだった。